これから日本語教師を目指す皆さんにとっては、「日本語教師で生活していけるのか」ということはかなり切実な問題だと思います。実際のところ日本語教師の報酬は決して高いとは言えず、いろいろな業界と比較すると安いと感じる方もいるかもしれません。わたしも日本語教師をしていて「給料さえ高ければこんなにすばらしい仕事は他にないのに」と思います。
では、なぜ日本語教師の報酬は低いんでしょうか?ちょっと整理して考えてみたいと思います。
日本語教師の報酬
日本語教師と一口で言っても国内と海外とで報酬は異なります。あまり明るい話ではありませんが一つの現実として参考にしてみてください。
国内で働く場合
日本語教師として働く場合、まずは非常勤として働き常勤を目指すのが通常のコースです。常勤であれば月給は約20万~25万円です。例えば大学の留学センターなどで働く常勤や日本語教育の研究者となると、1コマ(90分)1万円程度ももらえるようです。ワーキングプア(働く貧困層)ともいわれる仕事を持つ低所得者層のラインが年収200万円と言われています。
実は、比較的安定した職場で常勤で働く日本語教師はあまりいないのが現実です。日本語教師の多くは非常勤での雇用です。その場合の給料は高くて時給1800~2000円です。しかも1コマあたりの給料だと夏休みなどの長期の休みになるとその分給料が減ってしまう状況です。
しかも、非常勤の場合はフルタイムで働くのは難しく、「午前のみ」や「午後のみ」の授業で、実質週当たり2~3日の授業を受け持つことになります。そのため年収は150万円ほどとなってしまい、これでは結局「ワーキングプア」と言うことになってしまいます。
実際には多くの日本語教師がパートやアルバイトなど、他の仕事と掛け持ちの兼業日本語教師人が多いようです。しかも、日本語教師は授業行うだけではなく、教案や授業準備も必要になってきます。その時間はもちろん時給に含まれていません。給料のいい仕事とは言えない、なかなか地道な職業なのかもしれません。
海外で働く場合
海外で日本語教師!と聞くと何となくかっこよく聞こえますが、日本語教師が海外で必要とされる現場は、アジアが中心です。また、比較的裕福ではない国が多いようです。そうした国での日本語教師はやはり給料が日本より多いということはありませんし、生活する上ではインフラや食事などそれなりに覚悟が必要です。
中にはアジアの大都市での日本語教師の求人もあり、マンガやアニメなどの趣味のため、また日本企業で働く人のため、さらには日本への留学を考えている比較的富裕層の生徒たちが多い学校での求人もあります。
実際、私もそうしたアジアの国で日本語教師をしていましたが、給与は日本とあまり変わりませんでした。しかも、私の働いていた学校の生徒たちは、おおむねお金持ちの家庭の生徒が多い学校でした。また、海外の大学での日本語教師の職も比較的安定しており、きれいな宿舎が付いた学校などもありそれなりに魅力的です。
「海外」では、どんな国、どんな学校、どんな生徒たちが多いのかによっても給料にかなりのばらつきがありますね。それなりの覚悟で海外に行き仕事やその場所での生活を自分なりに楽しめる教師であれば、海外での日本語教師もかなりおススメです。
日本語教師の仕事は本当に報酬がそんなに安いのか
日本語教師の仕事は報酬が安い、考えている多くの人は、「教師の仕事ならそれなりに給与がもらえるはず」という幻想があるのかもしれません。
給与とは需要と供給のバランスで決まるわけですから、需要側(生徒)がいくらお金を出すかによって供給側(学校・教師)の報酬も決まっていきます。
貧困国での日本語教師や、親が借金をしてなんとか日本に来たという留学生のいる日本語学校で、それほどの給料が見込めないのが現状です。とはいえ、日本語教師が他の仕事に比べてかなり給料が低いということもありません。
まとめ
確かに日本語教師の仕事は決して給料のいい仕事ではありませんが、それ以上に本当に魅力的な仕事だと感じています。日本語教師の仕事は、マニュアル通りに働いていく仕事とは違い、毎日毎時間創意工夫が必要な必要な仕事ですから、日々の仕事が確実に自分のものになっていきます。つまり「一日やったらそれでおしまい」の肉体労働ではなく、コミュニケーション能力と、人間観察力、高いEQ(心の知能指数)、人としての魅力が要求される、かなり高度な「知的労働」です。
日本語教師の仕事をただ単に時給で考えるのではなく長期的な視点で自分の経験になっていく「経験積み上げ型」の仕事です。そう考えると、給料をもらいながら経験というお金で買えない資産をもらえているとも捉えられます。「対人」の仕事ですから、言語の現場だけでなくいろいろな仕事への応用が利くと思います。
日本語教師の仕事を始めようかどうしようかと迷っている方々はひとまず非常勤から始めてみて、日本語教師の仕事をしながら、自分も外国を勉強してみたり、いろいろな外国語習得の方法を研究してみたりと、言語のエキスパートを目指してみたはいかがでしょうか?
私は自分のことを「日本語教師」というより「言葉の専門家」だと考えています。常に変わりつつある、とらえどころのない言語という海を生徒と一緒に巡る「日本語水先案内人」ともいえるかもしれませんね。