日本語教師か企業に就職か?

大学で日本語教育を専攻している方もしくは大学に通いながら養成講座を受講されて、就職先を検討している方々も多いのではないでしょうか。この記事では、すぐに日本語教師として働き、長く日本語教師としての経験を積むことのメリット、さらに社会人を経験してから日本語教師の仕事に就くメリットについてそれぞれの立場からご紹介したいと思います。

すぐに日本語教師として働くメリット

日本語教師は経験が大切だといつも思います。いくら日本語文法や外国語教授法について教室で知識を学んでも、実際に自分で教えてみなければ経験にはなりません。逆に教壇では1コマ1コマが経験として積み重なり、毎回の授業にしっかり準備して臨めばそれが自分の資産になっていきます。

たしかに、社会人経験も無視はできませんが、初級の学生を教えるのに社会人経験はあまり役には立たないのも事実でしょう。50音から教え、いろいろな動詞の活用、助詞の使い方など、会話ができるようにするにはそれ相応の経験がものを言うのは間違いありません。

特に大学を出てすぐに海外に飛び出して行く場合には、若いからこそいろいろな環境の変化にも対応できるという強みを活かし、海外の日本語学校で日本語教師として活躍している方も少なくありません。日本語教師は体力や、柔軟性、気力などあらゆる点での対応力が求められます。残念ながら、人は年を重ねるごとにこうした柔軟性が失われていくのは事実ですから、そうした視点から見ても若いうちに日本語教師としてのキャリアをスタートさせるメリットはかなりあると言えるでしょう。

他の業界での仕事を全く考えておらず、すぐにでもいろいろな現場で日本語教師としての経験を積みたいと考えている方にとっては、現場での経験を一年でも長く積んでいくことが重要と言えるでしょう。

社会人経験があることのメリット

実は、日本語教師としての理想的な年齢は「30代前半から40代」と言われています。特に、社会人経験のある日本語教師は重宝されています。社会人経験のある日本語教師は、中級以上の、特に日系企業への就職や、日本企業と関連のあるセクションでの翻訳、通訳業務を目指している学生たちにとって、現場で経験した生の声を聞ける貴重な機会になるからです。

ビジネスマナーや、敬語など、「自分が企業で働いているときに・・・」などと経験を交えて話してくれるなら、学生たちにとっても教えられている事柄がより現実的になり、説得力が加わります。また、社会人経験があることからも、自分が見聞きした業界に関する知識や、就職に関するアドバイスもできるでしょう。

また社会人としての常識を身に着けている日本語教師は、いわゆる「世間ずれした学者肌の日本語教師」というイメージではなく、学生を一人のビジネスパーソンとして育てる面で即戦力となり非常に重宝されます。

さらに、日本語教師の仕事は全体に薄給で、特に海外で働く場合高給は期待できません。その点で、社会人経験があり、かつある程度の蓄えがあるなら、ひとまず収入をさほど心配せず日本語教師として働け、数年海外で経験を積んだのちに、その経験を活かしてさらに別のビジネスを考えたり、日本で経験者としてさらにキャリアアップすることも検討できます。

また、日本語教師という仕事は、シニアが活躍している現場でもあることから、焦って大卒後にすぐ日本語教師として働かずに、まずは生活の基盤を安定させた後、第二の人生として選択するには非常に適した仕事だと思います。

まとめ

今回は二つの立場から、大学卒業後すぐに日本語教師として働いたほうがいいのか、それとも社会人経験があったほうがいいのか、について考えてきました。どちらの側にもメリットとデメリットがあり、今後日本語教師としてどのようなキャリアを積んでいきたいかによっても進む方向性が異なるということがわかりました。実際のところずっと日本語教師として働くのは経済的にもなかなか難しいことではありますが、一生続けていける「ライフワーク」と捉えて、コツコツキャリアを積んでいけるといいですね。