「日本語教師の公的資格を創設」
2018年11月11日付けの読売新聞の朝刊で、こんな見出しの記事が出ていました。日本語教師関連の話題がトップニュースになることはあまりないので、ちょっと驚きました。この記事の背景には「今後日本国内で外国人就労を増やす政府の方針」があるとのこと。日本語教師の「公的資格」を新たに作ることで、外国人労働者をさらに受け入れやすくすることを狙っています。この方針には「日本語教育の質や、雇用の均等化を図る」目的があるということです。
2020年2月14日に文化審議会国語分科会日本語教育小委員会は、「公認日本語教師(仮称)」を創設する報告書案の大枠を了承されました。
ではこれから日本語教師関連の資格はどうなるんでしょうか?今後は今より資格を取るのが難しくなるのでしょうか?それとも簡単になるのでしょうか?
この記事では、現在の資格に関する状況を確認しながら、今後の日本語教師関連の資格についても考えていきたいと思います。
目次
現在の日本語教師の資格について
さきほどの新聞記事の見出しを見て「え?日本語教師の資格って公的資格じゃないの?」と思う人もいたのではないでしょうか。
実は現在、日本語教師になるための「公的資格」はありません。
「公的資格」と「民間資格」とは
公的資格とは医者や看護師、税理士などの「国家資格」のこと。保育士や介護福祉士、公認会計士などの資格も「公的資格」に含まれます。そして、日商簿記検定や英検などの資格も日本の省庁からのお墨付きをもらっている「公的資格」です。
一方「民間資格」とは、政府のお墨付きがないあくまで民間団体が主催するものです。「日本語教育能力検定試験」は現状ではTOEICやTOEFLや一般のパソコン関連の資格などと同じ「民間資格」の位置付けになるようです。
この先いつ公的資格、公認日本語教師(仮称)に?
2020年2月14日に文化審議会国語分科会日本語教育小委員会は、「公認日本語教師(仮称)」を創設する報告書案の大枠を了承され、国家資格化は数年以内に執行される見込みです。
現時点では2020年度以降の関連法成立を目指すとのことです。
日本語教師の資格は今後どうなる?
今後日本語教師の資格はどうなるのでしょうか?取得がより難しくなるのでしょうか。
あくまで予測ですが、資格化されても「資格の難易度は大きく変わらない」のではないでしょうか。
その理由は以下に記載します。
- すでに日本語教師が不足している
- 今回の法整備は給与などの待遇改善を目的としたもの
では、一つずつ考えて行きましょう。
すでに日本語教師は不足している
現在でも日本国内で日本語教師は不足しています。日本語教師の求人情報はたくさんありますよね。どこでも日本語教師が足りないからです。
日本語教師は外国人の日本語学習者5.6人につき1人だそうです。数字だけを見るとなんとなく日本語教師が充実している感じです。
でもこの数字実は底上げされていているんです。実際には38,000人の日本語教師のうち22,000人の58%がボランティアなんです。つまり、正規で給与を得ている日本語教師は16,000人だけということなります。
そうすると外国人の日本語学習者13.6人につき日本語教師はたった一人だけという現状ですね。語学学習のクラスは、先生一人につき生徒が少なければ少ないほど効率がいいわけですから、この数字はあまりにも少なすぎますね。数字だけ見ると日本国内で日本語のマンツーマンレッスンなんてよほどのことがない限り、ほとんど受けられないということになります。
ちなみに、「日本語教育能力検定試験」自体の合格率は25%程度です。
現在のような日本語教師不足の状況で、資格だけをさらに難しくしてもほとんど意味がありませんよね。新しい制度ができても資格の難易度は現状維持程度の合格率が妥当なのではないでしょうか。
今回の法整備は日本語教師の専門性を高めるとともに、雇用安定や人材確保を図るのが目的
日本語教師がこれほど少ない理由の一つに「日本語教師の給与待遇の低さ」があります。
58%がボランティアの日本語の先生という状況です。授業の準備の時間や、時給にならない学校の用事などを含めると完全に給与面で相当厳しい状況です。
また、どんな仕事にも給与面でのピンキリですが、業種全体として平均給与平均自体が比較的低いのです。こうした状況では、今後どんどん増加する外国人労働者に対し日本語を教える人は増えることはないでしょう。
政府としては日本語教師の公的資格を作って資格にハクを付けて、日本語教師になる人を増やしたい考えなのでしょう。この方針転換で日本語教師の給与待遇も改善されるといいですね!
考えみれば58%がボランティアで賄われている業界ってどうなんでしょうか?ある仕事の10人中6人程度はボランティアで正規に収入をもらっていない仕事だとすれば、そういう仕事にはあまり将来性がないように思えます。
新しい制度が整備されて優秀で有資格の日本語教師の待遇が改善されて、さらにもっと有給の日本教師が増えるのが理想です。さらにこれまでボランティアで日本語教師を頑張ってくれている方々に、当たり前のようにアルバイト費用が支払われるようになるといいですね!
新資格でどのように変わっていく?
現在は法務省告示校で働く場合は最終学歴によって日本語教師になるための要件は変わってきます。
<4大卒以上ではない場合>
・日本語教育能力検定試験に合格が必須
<4大卒以上の場合>
以下うち1つ以上の要件を満たす必要があります
・420時間修了(文化庁届出受理講座)
・日本語教育能力検定試験に合格
・大学等で日本語教育を主専攻もしくは副専攻
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
では新資格(公認日本語教師)が設立後はどのように変わる可能性が高いのでしょうか。
以下、3つの要件を満たす必要が出てくるようです。
日本語教師の資格仕組みイメージ案の議論のたたき台として出された内容となるため、まだ確定しておりません。
①日本語教育能力を判定する試験の合格
特に受験資格は設けないとのことです。
また、受験回数は複数回、受験地域も全国6地域以上になることが議論されています。
②教育実習の履修
基本的に教育実習の履修は必須となる可能性が高いです。
教育実習の現場については文化庁届出を受理されている日本語教師養成研修実施機関が用意した機関もしくは大学機関での
実施となるようです。
③学士以上
現在の日本語教師の要件の中には必須とはありませんが、今後は学士以上が必要になっている可能性が高いです。
現在の要件よりもだいぶ厳しくなっていくのではないかと思います。
現行の日本語教師資格を保有している方は無効になる?
一部のメディアの報道では、現職で日本語教師として活躍されている方やこれから420時間の受講や検定試験の合格を目指されている方にとっては「再度試験を受け直さなればいけないのでは、、」とも取れる内容が記載されていました。しかし、現在の議論では国家資格化されるまでに資格取得コースを受講された方は、経過措置の対象になる方向で進められているようです。
「公認日本語教師(仮称)」創設時点までに、現行の日本語教師資格を保有している者は経過措置の対象となる。
「公認日本語教師(仮称)」創設後、一定期間(=十分な期間)は、現行の日本語教師資格を保有している者は経過措置の対象となる。つまり、国家資格制度が施行されるまでに、現行の資格取得方法で着手された方々は、経過措置の対象になるということです。
まとめ
まだ議論段階ではあるため正式には「資格化」について等は決まっていません。ただし、現在の日本語教師に必要な条件よりも厳しくはなってくるでしょう。
そのため、日本語教師になりたいと考えている方は早めに420時間の受講や日本語教育能力検定試験合格に向けて早めに学習するほうがいいかもしれませんね。
新たな制度になり、給与面が少しでも改善されれば日本語教師としては嬉しいことです。本当にプロで優秀な日本語教師が給与面できちんと評価されるようになるのが、日本語教育業界全体が正常に発展して維持されてくためにも最低必要なことだと思います。今後の政府の方針転換で、一人でも多くの人が日本語教師として生活を維持して、仕事に一層やりがいを見出せるといいですね!